製造業で納期が間に合わない原因は、納期管理という業務の難しさに起因します。
多品種少量生産への切り替わりもあり、生産管理部門の業務を圧迫。
納期管理の最適化が追い付かない現状もあるでしょう。
本記事では、納期に間に合わない原因と納期管理を最適化する方法を解説します。
エクセルでの管理方法や基幹システムについても、あわせてご覧ください。
具体的にどのような理由から、納期遅延が引き起こされるのでしょうか。
本章では、4つの視点から遅延原因を解説します。
遅延原因の4つの視点は以下です。
4つの遅延原因の詳細をみていきましょう。
適切な生産計画立案には、営業と製造の部門間でスケジュールをはじめとした情報共有が必須です。
営業・製造間のコミュニケーションが不足した場合、工場の生産能力を超える注文を受けてしまい、納期に間に合わせるためにムリなスケジューリングの原因となってしまいます。
しかし、納期に余裕を持たせすぎるのも良くありません。
余裕を持たせた生産計画は、工場の人材リソースを余らせる原因になるうえ、出荷までに時間がかかるため製品管理の手間が増大します。
このように、適切な生産管理には部門間連携が重要なポイントとなるのです。
進捗管理を適正に行うために、作業日報を活用するのが一般的です。
一方で、製造業では作業日報を手動で対応している企業が多く、進捗管理の課題となるケースも。
作業日報を活用した進捗管理では、書類のプリントアウト・作業員による記録・用紙の回収・集計作業といった工程が必要であり、毎日多くの時間をかける必要があります。
作業日報を手動にしている場合、実績がリアルタイムで把握できないという問題もあるため、非効率的です。
工場では、管理者が製造指示を作成して、現場が指示書の完了予定日に合わせて製造します。
しかし、近年では嗜好の多様化が進み、特注品と呼ばれるバリエーションが多い品目が増加し、製造現場の作業負荷が増大。
作業手順も複雑化し、適切な製造指示作成が困難なことが現状に追い打ちをかけています。
これらの要因が重なれば、納期に遅れが生じてしまうケースもあるでしょう。
近年では、人材不足が深刻化し、製造が納期に間に合わないケースが増えています。
人材不足の深刻化は、現場の人手が不足するほか、人材育成にかける時間をも失いかねません。
人材育成がままならず、工員のスキルが不足し、製造指示にある完了予定日を守れないと言う事象も発生するのです。
納期管理を最適化するためには、下記5つの施策が有効です。
それぞれの進め方と、実施後に期待できる効果を解説します。
リードタイムの短縮を実現できれば、納期に間に合う可能性が高まる上に、生産性の向上も期待できます。
具体的な進め方は、作業工程ごとに所要時間を洗い出し、削れる工程を省いたり、置き換えたりして作業時間を短縮します。
ただし、リードタイムの短縮は手段であり、目的ではありません。
無闇に生産工程を削減した場合、製品の品質低下や不良品率の向上につながる恐れがあります。
したがって、リードタイムの短縮を図る際は、計画・実行・検証・改善のPDCAサイクルを回し段階的に進めることをおすすめします。
納期遅延が生じる一番の原因は、生産体制の把握不足です。
生産工程の業務進捗・生産性・人員配置などを把握しなければ、曖昧な納期管理やトラブル時の対応遅れにつながります。
そのため、現場の業務を可視化し、現場状況を加味した上で納期管理を進めることが大切です。
現場業務の見える化では、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を意識した現場の見通し向上や、4M(Man・Machine・Material・Method)を意識した業務体制の見直しを実施すると良いでしょう。
ただし、大掛かりな体制変更は現場業務に支障をきたす恐れもあります。
まずは、特に不透明を感じる業務を部分的に改善してみるのがいいでしょう。
営業部門は、顧客とのファーストコンタクトを担う部門です。
生産現場の状況を共有できるよう、情報武装することでムリ・ムダのない納期の設定につながります。
たとえば生産現場の可視化情報を、営業部門にデータベース上で共有すれば、生産現場の遅れを加味した達成可能な納期で案件を受注できるでしょう。
また、生産部門と営業部門の連携を強めることで、仕様変更や納期変更が生じた場合でも即座に情報を伝達でき、迅速に対処できます。
生産部門と営業部門の連携を強める方法はいくつかありますが、システムによる連携が最も有効。
会社規模や業種、生産方式に合わせた様々なシステムが提供されているため、一度検討してみてはいかがでしょうか。
納期管理よりも大枠な生産計画に余裕を作ることで、リードタイムの短縮・トラブルへの対応力強化につながります。
たとえば、必要在庫数よりも多く在庫を抱えれば、不良品が発生した場合でも納期に影響を及ぼすことなく出荷できます。
もちろん在庫を持たずに需要数を都度製造し、出荷・納品できるのがベストですが、日々変動する需要への対応・顧客への即納品や生産期間短縮を実現するには、適切なゆとりの確保が大切です。
しかし、生産工程全域に過度なゆとりを作ると、QCDへ悪影響を及ぼす恐れがあります。
したがって、段階的に生産管理全体へゆとりを作り、状況を見ながら適正値を模索すると良いでしょう。
新たな人材確保が困難な現状では、IoTをはじめとしたデジタル技術を用いた作業効率化が必要です。
たとえば、目視でチェックしていた検品作業をハンドターミナルで自動化したり、機材・資材を整理整頓し、物を探す時間を削減したりなどです。
さらにAIを活用して制御を自動化できれば、より大幅な作業効率化や生産性向上が見込めるでしょう。
AIが自律的に判断して作業できるようにするには調整が必要ですが、長期的な観点で考えると、それだけの手間をかける価値は十分あります。
リードタイムとは、受注から納品に至るまでの生産活動や輸送にかかる時間のこと。
リードタイムは、一般的に「サプライチェーン全体」を指す言葉です。
しかし、納品管理では、下記3つのリードタイムに細分化され、それぞれ納期が設けられています。
各リードタイムについて、具体的に解説します。
調達リードタイムとは、原材料や部品を仕入れるのに必要な所要時間です。
生産工程の最上流工程であり、ここで遅延が生じた場合、のちの製造・出荷にまで影響を及ぼします。
適切な納期管理のために、原材料や部品ごとに調達リードタイムが異なる点に注意しておきましょう。
事前にそれぞれのリードタイムを把握し、適切に管理することが大切です。
製造リードタイムとは、製造着手から製品完成までにかかる時間のこと。
業務改善やシステムの導入などにより、リードタイムの短縮を図りやすいものの、追加受注や仕様変更などの影響を受けやすいのが特徴です。
製造リードタイムを適切に短縮するには、製造現場の状況を把握し、柔軟に対応するのがポイントです。
出荷リードタイムは、製品完成後から取引先や顧客へ届くまでの所要時間を指します。
製造業企業では在庫管理コストを抑えるため、納期の直前に製品を完成させるケースが一般的。
したがって、配送ミスなどで出荷が遅れた場合、期日中に納品できない可能性が極めて高いのです。
エクセルで納品管理表を作成するのであれば、条件付き書式を利用した納期の色分け機能の実装がおすすめです。
この章ではエクセルを使った納期管理のコツである、納期の色分け機能の実装方法を紹介します。
納期が今日や明日に迫った項目を目立たせるには、下記の手順で設定します。
上記の画面が表示されるため、「昨日」となっている部分を今日・明日・今週などに任意で変更。
変更すると、設定した条件に該当するセルの色が変わります。
納期が特定の日数に迫っている項目を目立たせるには、下記の手順で設定します。
上記を設定した場合、納期が7日以内になった項目に自動で色が付けられます。
目立たせたい日付を変更する場合は、=$D4<Today()+◯の◯を変更するのみ。
この要領で残り日数ごとに色分けすると、納期を直感的に判断できるでしょう。
エクセルを使用して納期管理をする際は、ファイルを作成した目的と制作プロセスを共有しておくべきです。
ファイルを作成した目的を共有できれば、どのようなシーンで活用できるのかを理解しやすくなり、制作プロセスが共有できれば制作者が退職した後も活用できます。
社内に共有サーバーがある場合は、ファイルの置き場所を決めておき、原則コピー禁止にしましょう。
コピーを許可すると、個々のパソコンでの管理を許すことになるため、管理が行き届かない原因になります。
エクセルは多くのビジネスパーソンが日常的に利用しており、利用方法を教育する手間が少ない点が特徴。
またローコストで利用できるため、納期管理・在庫管理など様々な管理業務でエクセルを利用する企業が多く存在します。
ただしエクセルを使った納期管理には、下記のデメリットがあるため注意が必要です。
属人化の対策は前章で解説しましたが、完全に防止するのは困難なのが現状でしょう。
さらに、エクセルは同時編集ができない点や、データ量が増えると動作が重くなる点にも注意。
個々に作業する環境ではミスを発見しにくく、動作が重くなると業務の非効率化を招きます。
製造業の納期遅れを防止し、納期管理を最適化できるシステムは、おもに以下の2つです。
それぞれのシステムが、納期管理をどのように最適化できるのかを解説します。
生産管理システムによる一番の効果は、納期遅延の防止です。
生産管理システムは全生産工程の情報をデータベース上で管理でき、業務の見える化やムダな業務の削減につながります。
これにより、調達・製造・出荷リードタイムの短縮や、現実的な数値に基づく納期管理が可能に。
さらに、データベース上の情報は営業部門にリアルタイムで共有できるため、達成可能な納期で案件を受注できます。
納期遅延の原因を網羅的に対処でき、納期管理を最適化できるでしょう。
ERPシステムは、社内全体の基幹システムを統合でき、部門間の連携力を強化できるのが魅力です。
もちろん、生産管理システム・営業支援システムなど、部門別に必要な機能も網羅。
工場内だけでなく、企業全体の業務を見える化したいときにも活用でき、システム連携時の弊害リスクの心配がありません。
企業全体の情報のリアルタイム取得もできるため、工場内のトラブルによる遅延状況を素早く察知でき、より的確な経営判断を可能にします。
納期管理の課題だけでなく、部門ごとの基幹システムの老朽化やレガシー化などの課題を抱えている場合は、ERPシステムの導入も視野に入れておくといいでしょう。
本記事では、納期管理に関して下記3つのポイントを解説しました。
深刻な人材不足の中、多様性に富んだニーズを抱える市場に対応するには、システムによる作業効率化は必須となりつつあります。
一定以上の納期遵守率をキープするためには、マンパワーを基幹業務に集中させなければならず、ムダな業務はシステムに頼らざるを得ないのが現状なためです。
当社では、柔軟性に富んだコンポーネント型のERPソリューションを提供しております。
当社のERPは、自社に最適なクラウド環境を選択できるほか、簡単にパーソナライズできるポータル画面を有しているのも魅力です。
納期管理に関する課題解決にも大きく貢献できますので、お悩みの際はお気軽にお問い合わせください。